入社して間もない頃、僕はよくこんな言葉をかけられました。
「今日はここまででいいよ。無理しないで」
「まずは簡単なことから慣れてね」
「わからなければいつでも聞いて」
もちろん、そうやって気を遣ってもらえるのはありがたいことです。
でも、心の中ではいつもこう思っていました。
「もっとやらせてほしい。早く一人前になりたい」
僕は早く仕事を覚えて、いろんな業務に挑戦したいタイプです。
それなのに、周りの配慮が手厚すぎて、まるで透明な壁に囲まれているような感覚がありました。
なぜ、こんな環境ができたのか
最近の職場は、本当に新人に対して優しい。
その背景には、いくつかの社会的な流れがあります。
- ハラスメント防止の徹底
パワハラやセクハラを防ぐための研修やルールが広く浸透しました。
これは絶対に必要なことですが、「何でもハラスメントと言える」空気が生まれ、上司や先輩が新人に踏み込んだ指導をすることを避けるようになったと感じます。 - 働き方改革による定時退社の推奨
働きすぎを防ぐため、残業を減らし、定時で帰る文化が強まりました。
でもその分、仕事を通して学ぶ時間や、先輩と雑談しながら吸収できる知識の場が減りました。 - 離職防止のための過保護化
新人を長く続けさせるために、負担をとにかく減らす方針を取る会社が増えています。
ただ、その結果、挑戦や失敗から学べる機会が極端に減ってしまうこともあります。
ベンチに座り続ける新人選手
僕がこの状況を例えるなら、サッカーの試合でずっとベンチに座らされている新人選手です。
「ケガをさせたくない」「まだ経験が足りないから」と言われて試合には出してもらえない。
安全ではあるけれど、ボールを蹴る感覚も、試合の緊張感も、実戦でしか得られない経験も身につきません。
やる気がある僕からすれば、この状態はもどかしくてたまりません。
失敗してもいいからピッチに立ちたい。
その方が、ずっと早く成長できると信じているからです。
個人では変えにくい現実
でも、この空気を僕ひとりの力で変えるのは正直難しいと感じています。
上司や先輩は、社会の過敏な空気や社内のルールに縛られていて、「挑戦させること」自体がリスクになることもある。
ちょっと厳しい指導をしただけで「それはハラスメントだ」と言われるかもしれない——そう考えれば、距離を置くのも仕方ないのかもしれません。
僕ができること
それでも、僕は自分の成長のためにできることをやめたくない。
そこで意識しているのが、自分がどう働き、どう成長していきたいのかを、明確に上司や先輩に伝えることです。
例えば——
- 「この作業は慣れてきたので、次は○○をやらせてもらえますか」
- 「この分野を早く覚えたいので、一部でも担当させてください」
- 「短期間で成果を出したいので、挑戦できる業務を増やしていただけるとうれしいです」
こうやって、前向きかつ具体的に伝えるようにしています。
ただ「やりたい」と言うだけではなく、「なぜやりたいのか」「どう挑戦したいのか」まで話すと、相手も動きやすくなるからです。
同じ気持ちを持っている人は多い
僕の周りでも、「もっと早く仕事を覚えたい」「責任ある仕事をやってみたい」と思っている人は少なくありません。
でも、その気持ちを声に出せない人が多い。
配慮や優しさの裏にある“壁”を感じながらも、現状を受け入れてしまっている人もいます。
もしこの記事を読んで「それ、まさに自分のことだ」と感じる人がいたら、まずは小さな一歩として、自分の気持ちを誰かに伝えてみてほしい。
もしかしたら、その一言が、あなたと周囲の関係を少し変えるきっかけになるかもしれません。

最後に
優しさや安全配慮は、間違いなく大事です。
でも、それだけでは人は育たない。
安全な環境の中に、あえて挑戦の場を作り、そこで失敗も成功も経験することが必要です。
僕は、この気持ちを持ったまま埋もれていくのは嫌です。
だから、これからも自分の意欲を隠さず、仕事と正面から向き合っていこうと思います。
同じように成長を望む仲間と一緒に、少しずつでも環境を動かしていけたら——それが、僕の理想です。